紅い世界。
眼前に拡がりしは紅い世界。生命は息絶えて、ただあるのは紅い海。
光さえ届くことのない―――死の世界―――
こんな世界に、誰が生き残れようか―――?
仮に誰が生き残れる?……こんな世界などに。
食べ物すら……生きるために必要なものすらない――場所に
だが!!その死の世界に一人だけ…生き残っている者がいた。
それは唯の力のない少年。唯人の…愚者達の都合により利用されたりし者。
少年が立っている辺りは、時が刻もうと変わることはない。いや時すら存在しているのか?
少年の後方には……かつて、都市と呼ばれるたものが在るだけ…それは荒れ果て……あちらこちら破壊され……只の鉄の塊。
このような場所に……かつて…彼らが住んでいたのだ。
そして…前方に見えるのは…真っ赤な紅い海……さらに少年を見るようにこちらに向いている…巨大な顔。
その少年は紅い海に足を歩めながら…ブツブツと呪詛の様に呟いてる。
「……………なぜ…なぜ……なぜ」
「………何故…なぜ……」
「こんなの………なんで…」
「紅い…紅い…………」
「ハハッハハアッハハハアハハハハ―――――――――」
少年の心はすでに壊れ欠けていた…唯でさえ正常ではない状態。
ブツブツ呟きながら……ユックリユックリ歩んでいた。少年の体は肩までが紅い海に浸かっていた。
そして―――――
完全に浸かるまで辺りに笑い声が響く。
「アハハハハ……ハハッハハアハ…ヒハハハアハ………………」
――――完全に紅い海に沈んでいく―――――
紅い海の底に底に……沈んでいく…壊れた心のそこでやっと「死ねる」と思った。
しかし、そんな彼の最後の希望も……この紅い海に裏切られる…
少年の頭の中に…人々の記憶…情報…ありとあらゆる情報が……
頭が割れるほどの知識や情報…さらに使徒の力までもが流れ込んでくる。
さらに壊れた心で真実を知ることになる。
何故、紅い海になったのか?愚かな老人達の考え………そして父の目的……………
そして自分は目的の為の道具として利用されていた。
あんなに信じていた……ミサトさんですら使徒の復讐のために僕を利用していた。
アスカは僕を奴隷の様に扱っていた。
カヲル君は最後に僕を裏切った、信じてたのに…………。
綾波もそうだ……よくも…よくも…よくも…
少年の壊れた心に、徐々に徐々に憎しみや憎悪と云ったドス黒い感情が芽生えはじめる。
壊れた心が治っていく………間違った方向へと………
暗い暗い感情が…そして気力も尽きていた体に力が湧き始める……
「許せない……………………許せない…………………」
「憎い…憎い憎い憎い憎い……憎い……」
「憎い!!」
その一言に世界が震撼する、生命すらいないはずの世界が恐怖している、その…あまりの憎悪に………………
紅い海さえ微かに怯えている様にも見える。
少年は遥か空を目指して、紅い海を這い上がる。
その間やはり……紅い海が怯えている様に見える。
遥か上空に浮かぶ…もはやかつての少年の面影は無いに等しい………
少年の体からは常に憎悪 嫉み 悪意 嫉妬 欲望 絶望のそれらの負の念が滲み出、体の周りに漂っている。
邪悪な笑みを浮かべて高らかに笑いはじめる………
「ハハハッハアッハハハハーーーーーーーヒャハハハハハーーーーーーーーーー」
少年は口を三角に吊り曲げ邪悪な微笑みをしていた。そしてこれから、喜劇の幕が開かれる――――――――
愚かなる人という種の―――――――――――
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