腐臭の漂う中で、平然と眠りにつく、もはや感覚がおかしいとしか言いようがない。

あの時から永遠に同じことを繰り返すばかり……

大量に返り血を浴び…体のあちらこちらを汚しながら眠りにつき……

白狼が少年の顔を綺麗にし……再び目覚めればまた、同じことを繰り返す。

少年は気付くことはない…白狼が時折り悲しそうな表情をしている事に……

目覚めては殺し…作り上げ 目覚めては殺し…作り上げ 目覚めては殺し…作り上げ 殺し 殺し 殺し 死 死 死 死 の繰り返し……

そんなことを繰り返しているうちに…変化の兆しか、遂に少年の身体が悲鳴を上げ始めた。

いつもの様に化物を殺していると…普段なら簡単に避けられるはずの一撃を避けることが出来ず…叩き飛ばされる。



「なっ!!足が……」





ドカン!!




バウンドするように叩き飛ばされ…その衝撃で片腕がものの見事にポロリと地に落ち、その先からは血が出ることもなく黒く腐食していた。

落ちた片腕は砂のようにサラサラと消滅していく。

地に叩きつけられた少年は何とか身体を動かそうとするが…ピックリとも動かない…


「動か…ない??」


その光景を目にした、白狼が驚きを見せる。

ありえない…ありえない…そんな…ばかなと…………なぜ…

彼らは気にしないで、動かない少年に一斉に襲いかかろうとする。


キッシャー グゥオオオ−


はっと我に戻り…自らの主の元に駆けつけ、牙と爪を使い化物達を蹴散らす。


ザシュ!! グシャ!! ガッシュ!!


そして…己の鋭い牙を持って威嚇する。


グウルルルルルルルル………


しかし…すでに少年の身体には…傍目から見ても異常が進行していた。

徐々にではあるが……サラサラと少年の手足等が消滅していく。

本能的にか異変に気が付いた他の化物達も、その場に集まるかのように集い始める。

先程から主に近づこうとする者達を次から次へと潰してゆくがキリがない。


グシャ!! ガシュ!!  


今回はいつもより、異様に数が多すぎるのである。

そして、遂に押え切れず……溢れ出した極一部の化物達が少年に牙や爪と剥き出し襲いかかろうとする。

白狼は慌てて、主の方を見ると驚く。なぜなら身体の殆どがすでになくなっているからである。

その状態の少年に、化物達は今にも襲い掛かろうとしていった。

叫ぶ!!




「何故? 消える?この僕が?何故こんな所で消えねばならない?やる事が山ほどあるんだよ、

   そう……殺して殺して殺して殺して殺して…借りを返さなくちゃああああねえええええええ!!!」









少年の身体から闇が溢れ出し、闇は黒い触手となりて……迫り来る彼等を取り込み始める。

闇の中からは…この世の者とは思えない断末魔が響いてくる。

その光景を見ていた白狼は…何が起きたかが…理解できなかった。

黒い触手は、白狼にも迫ってくる…しかし逃げることもしない…守るべき主がいないのだから…

しかし、触手は白狼を避ける様にして…自らが届く範囲の彼等を捕らえて、闇に引きずり込んでゆく。

何故…自分を避けたのか分からなかった。

闇の中からは…断末魔やら…それらを喰らう音が聞こえてくる。





グチャ……グチャ…クチュ…クチャ!!





それらを繰り返し…しばらくして闇は球体の形へと変化して行き、さらに人型へと形を変化させた。

闇は完全に消え、その場には魔術師の格好のような……七つ目の白い仮面を被った存在が立っていた。 







 




その存在からは圧倒的力が放出されていた。

先程の少年など……比ではない、あきらかに次元が違いすぎた。

黒い触手から何とか逃れることができた彼等は、その気配をやはり本能で察し逃げ始める。

しかし、何処に逃げる場所のなどあろうものか?

所詮彼らは狩られる存在なのだから………

仮面の男は暫し沈黙しながら、逃げる彼らを見つづける。

愚かな行為と思いながら………呟く。


「滅」


その呟き一つであちらこちらから……何かが破裂する音が響いてくる。


ビシャ!! バシャ!!  パシャ!!


何が破裂したか……それは逃げた彼等である。

次々と身体の内側から破裂してゆく、次から次へと………

辺りは…彼らの肉片が飛び散り、血が流れ、あちらこちらに血の海が出来てゆく。


バシャ!! ビシャ !! パシャ!!


破裂してゆく音も止み……辺りに静寂が走る。

そして…仮面の男はクククと笑い出す。


「ククク…ハハハハハハ……これが今の私なのか??…フフフハハハハハ
   素晴らしいよ…素晴らしいよ.…ホント…以前よりもさらに力が…漲るよ……ハハハハハアッハハ」

「ハハハッハハハハ……………」


静寂な辺りから、高らかな笑い声が響く。

先程から…その光景を見ていた……白狼はわけがわからなかった。

あれは一体誰なのだ? 自分の主は何処へ?

一体何がどうなっている? と混乱していると、笑い声が止み仮面の男がこちらに近づいて来る。


コツコツ コツコツ


静寂の中で足音を立てながら。

混乱している中、近づいて来たのに気付き牙を剥き出しにして殺気を出して唸る。


グウルルルルルルル


仮面の男は放たれる殺気を気にすることなく近づき、口を開く。


「私が分からないか? 最初にお前を作りあげた…私が…
   少し落ち着いて冷静になるがよい…私の波動が分かるはずだ。」


仮面の男から聞こえる声を、口調をおかしく思いながらも、相手の言葉通り落ち着き冷静さを取り戻す。

男の顔の方を見て改めて気付く………

気配と波動を改めて感じ、自分の主と同じいや主そのものであると気付く。

仮面の男は、白狼の頭に手を持ってくると撫で始めながら、一言。


「気にするな…」


そう言いながら頭を撫でる。

撫でられ嬉しそうな顔つきになりながら、仮面の男が再び口を開くのを待つ。


「私が得た、新しい力でお前にも力を授けよう……力を…ククク」


仮面の男は手に力を込めて、白狼にかざすと見る見る内に変化し美しい女性の姿になる。

その姿は髪は腰まで長く伸び、頭には獣耳が生え、美しい毛並みの尻尾も生えている。

自らの姿に…驚きながらしばらくして…やっと口を開く。


「この姿は? 主よ人の姿ではありませんか?」


そう疑問を口にするが、確かに以前よりも力が漲っているのは確か……

疑問に思うと仮面の男が口を開きながら、抱き寄せる。


「先程の姿にも戻ることができる…それからお前の名はハクだ」

「ハク??ですか…ありがとうございます…しかし……主よ…あっ…ああ…あん…お止めください。」


仮面の男はハクを抱き寄せながら、枝体のあちらこちらをまさぐり始める。

女性の肉体を持って余す所もなく触られ続ける。

特に一番弱点の尻尾まで触られる。

それは、嫌ではないが、とても恥ずかしく…でも主に触れると嬉しく、気持ちがいい始めての経験だった。

ハクは遂に耐えれなくなり、高い声をあげて…くた〜と意識を失い元の白狼の姿に戻る。

それを見届けた、仮面の男は再び口を開く。


「ククク…………私の準備はできた……後は舞台を整えるのみ…クククハハハハハハ……」
   


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